認知症の早期発見、診療体制の充実、医療と福祉の連携強化、専門医療相談の充実を図ることを目的として、現在、群馬県内には14の医療機関に認知症疾患医療センターが設置されています。
群馬大学医学部附属病院では、平成22年9月1日より、群馬県中核型センターの指定をうけ、センターを開設しました。活動としては、下記の内容があります。
1受診前の認知症に関する相談
当センターでは医療相談員が、認知症に関する不安や悩みのある方、その家族、関係機関(地域包括支援センター、区市町村、保健所・保健センター、介護保険事業所等)からの認知症に関する医療相談に対応するとともに、地域包括支援センター等と連携を図り、介護サービス利用の相談、また適切な医療機関等の紹介等を行います。
2認知症かどうかの診断
- 診察
- 問診(主訴、病歴の聴取)
ご本人やご家族からの聞き取りを行います。記憶力の変化や体の変調を感じた頃から病院を受診するまでの病状の変化や経過をお聞きします。いつ頃からどのような症状が出てきて、それが経過とともにどのように変化したかなど、可能であればそのときの具体的なエピソードや気になったことなどを話していただけると診断の参考になります。 - 視診、触診、聴診
身体的に認知症の原因となり得る体の変化が出ていないか診察します。
- 問診(主訴、病歴の聴取)
-
心理検査
医師や心理検査担当者による質問形式の認知機能検査を行います。これにより認知症の有無やその程度を判定していきます。具体的にはMMSE(ミニメンタルテスト)、MOCA-J(モカジェイ)、FAB(前頭葉機能検査)と呼ばれる検査を行います。また、状態に応じてさらに詳しい心理検査を行うこともあります。
- 臨床検査
血液検査(一般採血に加えて、甲状腺機能、ビタミンB群、葉酸、感染症などの項目も測定します)、レントゲン、頭部画像検査(CT、MRI、SPECT)などを必要に応じて行います。以下に、画像検査を紹介します。
- 頭部MRI(またはCT)
この検査では脳の形を詳しく調べることができます。またMRAでは脳の血管の形を調べることができます。 - SPECT
この検査では放射性同位元素と呼ばれる薬剤を注射し、脳の血流の分布を詳しく調べることができます。 - ドパミントランスポーター・シンチグラフィー(DATスキャン®)
脳内の黒質から線条体に向かう神経経路(ドパミン神経)に存在するドパミントランスポーターを画像化し、ドパミン神経の変性・脱落の程度を評価する検査です。レビー小体型認知症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核症候群などで信号強度が低下します。 - MIBG心筋シンチグラフィ
心筋における交感神経終末部の活動性を評価します。心筋での集積が低下している場合には、レビー小体型認知症やパーキンソン病が疑われます。
- 頭部MRI(またはCT)
3認知症の治療
認知症の行動・心理症状(BPSD)は、かかりつけ医に相談後、地域の病院に通院治療や入院して治療することもあります。在宅療養の際に、介護サービスの利用やリハビリテーションを行うことがあり、その時には地域包括支援センターやケアマネージャーと連絡をとる必要があります。必要に応じて、当センターからも連絡することができます。認知症とともに身体合併症に対する治療や対応が求められることもあり、心配される患者さんの家族もいらっしゃいます。必要に応じて、適切な治療を受けられる病院を紹介することがあります。
4認知症に関する啓発活動
ホームページやパンフレット等により一般の方々に向けて認知症に関する情報提供を行ったり、関係機関に向けて認知症医療について普及と啓発、認知症に関する知識の向上を図るため、研修会を開催しています。当センターでは発足後より研修会を開催し、事例報告、活動報告、講演を行っており、さまざまな認知症医療に関する情報の共有や意見交換を図ってきました。
5かかりつけ医など関係医療機関との連携
かかりつけ医をはじめとする保健医療機関関係者への認知症に関する知識の向上を図るため、研修会を行います。当センターは、患者や家族の相談窓口としての役割をもち、また、かかりつけ医との円滑な連携により認知症診療のレベルアップを図ります。
6地域拠点型センターとの連携と支援
当センターは群馬県において中核型の認知症疾患医療センターであり、地域拠点型センターとの連携や支援を行うことにより、群馬県の認知症診療を向上させる役割があります。認知症疾患医療センター間での事例報告や活動報告、講演などの研修会等を通じて、相互理解や情報の共有を図ることにより、認知症診療の向上を目指します。