第8回群馬大学認知症疾患医療センター研修会・合同症例検討会が行われました。
4月17日群大病院認知症疾患医療センター研修会にて、西毛病院・認知症疾患医療センターの諸川 由実代先生に「地域拠点型認知症疾患医療センターとしての西毛病院における活動状況」の御講演をして頂きました。
富岡地区の認知症診療活動の取り組みとして、地域の医療機関や開業医の医師やコメディカル・スタッフとの連携を図るために事例を取り上げ検討する研修会が同院主催にて行われました。
地域住民の方々も多数参加されたとのことで、地域での認知症の理解や知識の普及に努められているとのことでした。
患者のBPSD悪化のため、入院ができるように認知症病棟60床を設けて対応できるようにされているとのことでした。
BPSD悪化の原因として疾患の進行だけでなく、内服している薬剤が原因となっている場合も少なからず見られ、患者への薬剤状況については患者の精神的身体的の安定した状態であっても気を配るべきであると強調されました。
患者を取り巻く種々の環境についても注意を払い、精神的に不安定になる要因を軽減したり、取り除く努力を患者だけでなく家族とも協力する必要があると説明されました。
そのためには入院による治療ばかりでなく、介護・ケア・リハビリテーションなども重要な手段であり、患者・家族ばかりでなく地域住民への理解を深めて行く必要を訴えられました。
症例検討会では進行性記憶障害と動作緩慢を示す症例報告を長嶺 俊先生が行いました。
一例目は神経学的には、錐体外路徴候、錐体路徴候、ミオクローヌス、小脳失調を認め、数か月の短い期間に進行性に悪化した経過を示しました。髄液一般検査では異常なく、頭部MRI拡散強調画像では、大脳皮質や他の部位に複数の高信号変化を認め、脳波にてPSD(周期性同期性放電)を認め、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病:CJD)と考えられました。
各種の治療にも反応せず、入院中に不穏・興奮、意識障害の急速な悪化がみられたため、精神科病院への転院となりました。
もう一症例は過去に当科に入院した患者で、頸部の不随意運動と記憶障害・見当識障害、徘徊などの異常行動を認め、入院となりました。
頭部MRI拡散強調画像では大脳皮質に高信号変化を示し、脳波にて徐波を認めました。
CJDを疑い、プリオン(PRNP)遺伝子解析ではM232R変異が確認されました。
このPRNP変異ではレビー小体を認めたDLB症例の報告があり(Koide T et al.Neurology2004)、急速に悪化する病型と緩徐の推移する病型が知られており、臨床像の多様性が指摘されています。
この症例も最近は病状が安定しておりCJDとしては非典型と考えられますが、今後の経過のフォローアップが必要とされました。