群馬大学医学部附属病院認知症疾患医療センター研修会・第13回認知症疾患合同症例検討会が行われました。
2月19日(火)群馬大学医学部附属病院認知症疾患医療センター研修会・第13回認知症疾患合同症例検討会が行われました。
群馬大学医学部附属病院患者支援センター・認知症疾患医療センター精神保健福祉士(PSW)の中里亜矢子さんが「群大病院認知症疾患医療センターの活動報告」を行いました。
当センターの業務の説明から始まり、センターでの相談実績を提示されました。当センターでの相談(電話、面接)では、病気の相談、受診の希望、介護の相談が多く、次いで、福祉サービス利用、病院・施設紹介が多かったとのことです。
具体的な相談内容として、認知症の症状をもつ家族の受診先の相談、本人の病院受診や介護サービスの拒否、介護の仕方、易怒性や暴力行為への対応などが多かったようです。
3つの事例を提示し、それぞれの対応について、説明されました。家族の声として、家族の生活をみてほしい、認知症の家族に接する困難さ、本人への認知症の病名告知のつらさ、困難さを感じることが多いようです。今後の課題として、本人、家族が安心して暮らすには、かかりつけ医、認知症疾患医療センター、包括支援センターがお互いに情報交換を行い、診療と介護・ケアが円滑に連携することが求められ、当センターも地域および他地域と共に活動していくことが重要と説明されました。
続いて、社団法人「認知症の人と家族の会」理事・群馬県支部代表、通所介護サービス「デイみさと」 施設長の田部井 康夫さんが、「家族として認知症にかかわる」という演題で御講演されました。
田部井さんは、東北大学卒業後、都内にて会社員をされていましたが、母の認知症発病をきっかけに故郷の群馬に戻り、母の介護と共に、「認知症の家族の会」にスタッフとして参加され、現在の介護の仕事にかかわり始めました。
1987年、認知症の人と家族の会・群馬県支部長となりました。
実際の介護体験を基に、知識や経験によっても解決できない悩みを抱える介護家族支える。そして介護職として認知症ケアを深めることが当初の目的だったそうです。
その後のご自身の経験から、認知症初期における適切な対応の重要性、「患者会のつどい」に寄せられる家族の声の重み感じ、「家族支援」の必要性を再認識されているそうです。
介護家族の困難な点としては、①認知症の人本人がもつ深い悩みと介護家族の悩み、②認知症の進行とともに、今までなかった家族の苦悩が生じる、③家族が昔の姿を失っていくことを受容することができない、④昔の姿を失っていく状態に対して寛容でなくなってしまう、⑤やさしくできない自分に嫌悪感を抱く、⑥認知症という病の難しさを感じ、精神的に落ち込む。現実にも、同じ親子でありながら、認知症を発症した親に対して、つらい言葉を発してしまう、冷たい態度で接してしまうことにもどかしさを感じ、忸怩たる思いに自らつらく感じてしまうことが、介護をするうえでの支障になることもあるそうです。
家族の望む支援と家族の会の役割として、①家族(と本人)を困らせる症状の軽減・緩和そして解消、②良質なレスパイトが十分に提供される、③精神的な支援が挙げられ、「家族の会」が果たす実際的な役割としての活動の三本柱として、「つどい」(認知症患者をもつ家族が悩みを打ち明け、お互いの情報交換の場をつくる)、電話相談、会報の発行を行っているそうです。
最後に、認知症家族が医療関係者に望みたいこととして、①家族が最も困っていることを解消してほしい、②「困った感」を共有できると感じられるように接してほしい、③悩みを共有する場として「家族の会」を紹介してほしい、と締めくくられました。
当日は、学内の神経内科、精神科、学外の医師、前橋市内の包括支援センターの皆さんも多数参加され、大変に活発な議論と意見交換をすることができました。
これからも益々、多職種の方々との交流が必要であり、そのうえで認知症診療の向上が求められるものと感じました。