
抗アミロイドβ抗体療法について
アルツハイマー病の患者さんの脳ではアミロイドβ(Aβ)というタンパク質が異常にたまっていることが分かっており、抗アミロイドβ抗体はこのAβに作用します。
現在、日本で使用できる抗アミロイドβ抗体には、レケンビ®(レカネマブ)とケサンラ®(ドナネマブ)の2剤があります。
両剤とも「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症(軽度アルツハイマー型認知症)」に対する点滴薬です。
抗アミロイドβ抗体には既に萎縮してしまった脳をもどす(神経細胞を回復させる)作用はありません。そのため、認知機能の低下をゆるやかにする作用は期待できますが、認知機能を回復させる作用はありません。
■レケンビ®について
Aβがかたまりになる途中の物質(Aβプロトフィブリル)にレケンビがくっつくことで、異物を排除する細胞のミクログリアを引き寄せ、Aβを取り除きます。
その結果、脳のAβが減り、アルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されています。
臨床試験(治験)の結果では、18か月間の治療で、偽薬に比べて症状の進行が約27.1%抑制されました。


■ケサンラ®について
Aβのかたまり(不溶性Aβプラーク)にケサンラがくっつくことで、異物を排除する細胞のミクログリアを引き寄せ、Aβのかたまりを取り除きます。
その結果、脳のAβが減り、アルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されています。
臨床試験(治験)の結果では、76週間の治療で、偽薬に比べて症状の進行が約28.9%抑制されました。


■レケンビ®とケサンラ®の違い
レケンビ® | ケサンラ® | |
---|---|---|
使用できる方の基準 | MMSE 22点以上 | MMSE 20~28点 |
投与方法 | 2週に1回 1時間の点滴 | 4週に1回 30分間の点滴 |
投与期間 | 18ヶ月間 | 18ヶ月間 (投与開始後12ヶ月時点のアミロイドPET結果で、投与を終了することもある) |
ARIAについて
アルツハイマー病の患者さんに対してレケンビの治療の効果が期待される一方で、注意すべき薬の副作用も報告されています。 特にアミロイド関連画像異常「ARIA」(Amyloid-Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用に注意が必要です。ARIAは脳からAβが除去されるときに一時的に血液や血漿(血液中の水分などの成分)が血管の外に漏れ出すことで起こるといわれています。それにより、脳のむくみや脳の中で出血が起こることがあります。大きくわけて以下の2つに分けられます。
■ARIAとは
アルツハイマー病の患者さんに対して抗アミロイドβ抗体療法の効果が期待される一方で、注意すべき薬の副作用も報告されています。
特にアミロイド関連画像異常「ARIA」(Amyloid-Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用に注意が必要です。
ARIAは脳からAβが除去されるときに一時的に血液や血漿(血液中の水分などの成分)が血管の外に漏れ出すことで起こるといわれています。
それにより、脳のむくみや脳の中で出血が起こることがあります。大きくわけて以下の2つに分けられます。
ARIA-E:脳の血管の周りに水分などが溜まっておこる脳のむくみ
ARIA-H:脳内の出血や出血による鉄分の沈着


■ARIAの症状
一般的に多くのARIAは無症状なことが多いです。
しかし、頭痛、錯乱、嘔気・嘔吐、視覚障害、精神症状、不動性めまい、疲労、歩行障害などの症状が出現することがあります。
また、頻度は低いですが重篤な神経症状(脳症、局所神経症状、痙攣など)が起こり、入院治療が必要になる場合もあります。
※ARIAの出現がないかどうか確認するために抗アミロイドβ抗体療法中は定期的にMRIの撮影を受けて頂きます。もしARIAが見つかった場合には程度に応じて抗アミロイドβ抗体療法を中止することがあります。
実際の受診の流れ
- 1
かかりつけ医からご紹介いただき、ご家族と一緒に受診していただきます。
- 2
治療による副作用や金額について説明を聞き、本人・家族の希望があることを確認します。
- 3
問診や頭部MRI検査にて治療の適応となることを確認します。
- 4
神経心理検査を実施し、治療の適応となることを確認します。
- 5
アミロイドPETを実施し、アミロイド沈着陽性と判定されたことを確認します。
- 6
レケンビ®もしくはケサンラ®投与開始(初回は1~2泊程度の入院となることがあります、その後はレケンビ®は2週に1回、ケサンラ®は4週に1回外来通院にて点滴治療を受けます)。また適宜MRIや神経心理検査などを行い、副作用の出現がないかなど確認していきます。
上記のようにいくつかの検査や診察を経て治療が開始します。検査の結果治療の適応にならないこともあります。
疑問などあればいつでもセンターの電話相談をご利用ください。