アルツハイマー病に対する新薬レカネマブ(レケンビⓇ)による治療について
2023年12月に発売となった、アルツハイマー病に対する新薬レケンビⓇによる治療が当院でも開始となりました。
レケンビⓇとは、「アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)」と「アルツハイマー病による軽度の認知症(軽度アルツハイマー型認知症)」に対する点滴薬です。
アルツハイマー病の患者様の脳ではアミロイドβ(Aβ)というタンパク質が異常にたまっていることが分かっており、レケンビはこのAβに作用します。
Aβがかたまりになる途中の物質(Aβプロトフィブリル)にレケンビⓇがくっつくことで、異物を排除する細胞のミクログリアを引き寄せ、Aβを取り除きます。
その結果、脳のAβが減り、アルツハイマー病の進行が遅くなることが期待されています。
一方でレケンビⓇには既に萎縮してしまった脳をもどす(神経細胞を回復させる)作用はありません。そのため、認知機能の低下をゆるやかにする作用は期待できますが、認知機能を回復させる作用はありません。
副作用について
アルツハイマー病の患者さんに対してレケンビの治療の効果が期待される一方で、注意すべき薬の副作用も報告されています。 特にアミロイド関連画像異常「ARIA」(Amyloid-Related Imaging Abnormalities)と呼ばれる副作用に注意が必要です。ARIAは脳からAβが除去されるときに一時的に血液や血漿(血液中の水分などの成分)が血管の外に漏れ出すことで起こるといわれています。それにより、脳のむくみや脳の中で出血が起こることがあります。大きくわけて以下の2つに分けられます。
ARIA-E:脳の血管の周りに水分などが溜まっておこる脳のむくみ
ARIA-H:脳内の出血や出血による鉄分の沈着
ARIAの症状
一般的に多くのARIAは無症状なことが多いです。
しかし、頭痛、錯乱、嘔気・嘔吐、視覚障害、精神症状、不動性めまい、疲労、歩行障害などの症状が出現することがあります。
また、頻度は低いですが重篤な神経症状(脳症、局所神経症状、痙攣など)が起こり、入院治療が必要になる場合もあります。
※ARIAの出現がないかどうか確認するためにレケンビの投与中は定期的にMRIの撮影を受けて頂きます。もしARIAが見つかった場合には程度に応じてレケンビの投与を中止することがあります。
実際の受診の流れ
- 1
かかりつけ医からご紹介いただき、ご家族と一緒に受診していただきます。
- 2
治療による副作用や金額について説明を聞き、本人・家族の希望があることを確認します。
- 3
問診や頭部MRI検査にてレケンビⓇの適応となることを確認します。
- 4
神経心理検査を実施、MMSE(Mini Mental State Examination) 22点以上かつCDR(臨床的認知症尺度)0.5もしくは1と判定されたことを確認します。
- 5
アミロイドPETを実施し、アミロイド沈着陽性と判定されたことを確認します。
- 6
レケンビⓇの投与開始(初回は1~2泊程度の入院となることがあります、その後は2週に1回外来通院にて点滴治療を受けます)。また適宜MRIや神経心理検査などを行い、副作用の出現がないかなど確認していきます。
上記のようにいくつかの検査や診察を経て治療が開始します。検査の結果治療の適応にならないこともあります。
疑問などあればいつでもセンターの電話相談をご利用ください。