第10回群大病院認知症疾患医療センター研修会・合同症例検討会が行われました。
6月19日に群大病院・認知症疾患医療センター研修会.合同症例検討会を行いました。
今回は医療法人原会 原 病院の湊 崇暢先生から「われわれは超高齢社会といかに向き合うべきか」という御講演を頂きました。
まず原病院の現状について報告され、認知症患者の来院者数と入院患者数の増加と高齢化について説明がありました。
入院患者の増加とともに、自宅復帰ができない患者の場合、退院先、転院先が少ないことが問題点とされ、ここ数年顕著になっていると述べられました。
配偶者が高齢化している場合、また配偶者も認知症である場合、自宅で介護できる家族が十分にいない場合、認知症だけでなく身体疾患を合併している場合など、入院している病院から自宅に戻る条件が整わないケースが多々ありますが、このような退院後の自宅療養の問題は地域医療も含めてこれから十分に検討すべき課題であるものと考えられます。
症例検討会ではまず神経内科・田代からアミロイドPET(PIB-PET)検査について原理、検査方法と現状報告の説明がありました。
アルツハイマー病脳でみられるβアミロイド蛋白に対する標識物質:ピッツバーグ化合物B(11C-PIB)を作製し、画像としてβアミロイド蛋白を可視化する画期的な方法です。
当院では、神経内科と放射線診断核医学教室が共同で研究を進めており、アルツハイマー病患者では前頭葉、側頭葉や頭頂葉などβアミロイド蛋白が蓄積する部位に信号変化を認めます。
今回の研修会ではアルツハイマー型認知症の自験例の臨床所見とPIB-PET画像を提示しました。
またMCI(軽度認知機能障害)症例でも陽性所見を認める場合や、臨床的にはアルツハイマー型認知症と考えられた症例がPIB-PETでは陰性であった場合があり、臨床所見、各種認知機能検査や従来の画像所見とPIB-PET検査を組み合わせることにより精度の高い認知症診断が可能になるものと考えられます。
次に神経内科・池田が進行性失語症(PA)と考えられる症例の報告を行いました。
PAは緩徐進行性に失語症が悪化し、認知機能障害も併せて出現する疾患です。
この症例は言語・認知機能検査、MRIや脳血流SPECTではPAと診断されており、PIB-PET検査で陽性所見を示しました。
一方、意味性認知症(SD)を示す別の症例においてはPIB-PET検査では陰性所見を示しました。
前頭側頭葉変性症(FTLD)では、前頭側頭型認知症(FTD)のほかにPAやSDが知られていますが、PIB-PET検査によりこれらの疾患でアミロイド陽性症例も報告されており、その病態については多様性を有するものと近年考えられています。
またMCIや健常者においてもPIB-PET検査で陽性例もいることから、本検査を受けるにあたっては、十分に注意を払ったうえで行うべきであると考えます(現在、群大病院でのPIB-PET検査は研究段階であり、一般の患者さんには行っていません)。